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2024/01/01

固有振動と固有振動数

固有振動数・固有振動とは?

固有振動(こゆうしんどう)とは、物体に一度外力(衝撃や押し引きなど)を与えたあと、それを放置したときに、その物体が持つ性質に基づいて物体が自然に振動を始め、一定の周波数で振動を繰り返す現象を指します。そしてそのときの振動数(1秒間あたりの振動の回数)を固有振動数(natural frequency)と呼びます。

たとえば、金属板やバネに軽く衝撃を与えると「びーん」という音とともに微細に振動し、やがて止まります。このとき振動が最も安定して継続しているタイミングの振動数が「固有振動数」であり、その揺れ自体が「固有振動」です。

固有振動数が生じる原理

物体が外力を受けると、元に戻ろうとする力(復元力)が働きます。この力によって生じた振動は、空気抵抗や内部摩擦により時間とともに減衰しますが、最初の数秒間は物体がもともと持つ特性に基づく振動=固有振動が支配的になります。

このとき、外部の力が取り除かれていても、物体自身の材質や形状によって一定の周波数で振動が続く性質があり、それが固有振動の基本的なメカニズムです。

固有振動数の決まり方と式、関係する物理量

固有振動数は、以下のような物理的特性により決まります:

  • 材質:ヤング率(弾性率)、密度
  • 形状:長さ、断面形状、質量分布
  • 拘束条件:固定・片持ちなどの支持条件

 
振動数
 

 

ここで はバネ定数(剛性)、 は質量です。より複雑な形状では、固有振動数は解析や実験により求められます。

曲げ・ねじりなど振動方向による違い

固有振動数は、振動の方向によって異なります。主に以下のような種類があります:

  • 振動の種類|関係する物理量|例
  • 曲げ振動 |ヤング率・断面二次モーメント|橋梁の上下揺れ
  • ねじり振動|ねじり剛性(せん断弾性率|シャフトのねじれ
  • 軸方向振動|質量とバネ定数|単純なバネ-質量系

 
同じ物体でも、振動方向が異なれば固有振動数も異なるため、構造設計や製品開発では多方向の固有振動数を評価することが重要です。

固有振動と実生活での具体例

固有振動は、私たちの生活の中にも数多く存在しています。たとえば: 

  • 音叉や楽器の弦:これらの発する特定の音は、それぞれおの固有振動によって生まれる。
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  • 自動車のサスペンション:乗り心地を左右する重要な部品で、路面からの振動が共振しないように、その固有振動数が設計されている。
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  • ビルや橋梁:共振(共鳴)を避けるために固有振動数の設計が不可欠
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  • 家電の異音:家電製品の部品が、モーターの回転数など外部の振動源と共振し、固有振動を起こして不快な音を発生させるケースもある。

 
また、設計上で固有振動数が外部の振動源(道路振動、地震、エンジン回転数など)と一致すると共振が起き、大きな破壊につながることもあります。

まとめ:固有振動数は設計と安全性に直結する重要な特性

固有振動数・固有振動は、物体が「どのように・どれくらい振動するか」を決定づける基本特性であり、材質・形状・支持条件に応じて変化します。設計段階でこれを無視すると、振動障害や騒音、共振による破壊リスクが高まります。製品開発や構造設計では、固有振動数の把握と調整が不可欠な要素となっています。

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